寝る前に聞く音楽として夏っぽい曲をYouTubeで探していたら、風鈴や鈴虫の鳴き声を混ぜた環境音に辿り着いた。実家の周囲は田んぼが多かったので、田植えをして水が張ってある今の時期は蛙がよく鳴いていた。
蛙の鳴き声といえばよく思い出す幼少期の記憶がある。
忘れもしない幼稚園に通っていた頃。私は「頭が痛い」と母に体調不良を訴えた。熱があってしんどいとかではなく、シンプルに頭が痛かった。しかしインフルエンザの頭痛に比べれば大したことはなく、ちょっと頭痛いかなというくらいで軽い気持ちで言った。しかしこの発言に端を発して、私は数日入院することになる。
その時連れて行かれたのは普段お世話になっている地元の小児クリニックではなく、隣町の大きな病院だった。どんな診察を受けたかは覚えていないがすぐに入院することになって腕には点滴のような管がつけられ、その先に何やら大きな機械があり、これがちょっと動くだけでアラート音を鳴らしたりするのでトイレに行くだけでもひと苦労だった。
あとから知ったことだが、その時私の容態が特別悪かったわけではなく、姉が小さい頃大病を患った経験から両親が「なにか大きな病気が潜んでいるかも」と警戒して設備の整った病院にかかったのだという。今思えば検査入院のようなものだったのかもしれない。
4歳かそこらの私にはその辺の事情が理解できず、とにかく大変なことになったと思ったし、慣れない病室での生活は不安だらけ。夜中目覚めると、付き添いの母が私のベッドに突っ伏して眠っており、軽い気持ちで頭が痛いだなんて言ったことを後悔した。
そんな病院は土手の近くにあり、蛙の鳴き声がよく聞こえた。私は大きな機械に繋がれていたのであまり自由に院内を歩くこともできなかったが、同室に入院していた何歳か年上のお姉さんはそんな機械には繋がれておらず比較的自由に動いていて羨ましかった。幼稚園児の私からすると、小学生というだけで「すごいお姉さんだ!」という感覚があった。困りごとがあってナースコールを使う時も受け答えがハキハキしているなあと密かに憧れていたお姉さん。私は母が一時的に離れている時に不安になってナースコールを鳴らしたのに、どうしたのかと問いかけられると何も言えなくなってしまうレベルのコミュ力だった。
そんな隣のお姉さんが、夜泣いていたことがあった。お姉さんと私が数日の入院期間でどれだけ仲良くなったかは覚えていないが、その時「どうしたの?」と私が声をかけた記憶がある。するとお姉さんは「蛙がうるさくて眠れない」と言って、私はカルチャーショックというか、違う感覚に驚いた記憶がある。田んぼに囲まれた場所で育った私からすると蛙の鳴き声は「うるさい」とかそもそも考える類のものではなく、最初からそこにある生活音みたいなものだった。背景みたいにずっとそこにあるから気になったことがない。そのお姉さんは私より都会で暮らしているのかなあと思いながら、特に解決策を提示することもできない無力で小さな私であった。どうにかしなきゃと思ってナースコールを使わせてもらったかな……そのあたりは正確に思い出せないけど、命に関わらないことで何度かナースコールをしてしまいご迷惑をおかけしました、当時の看護師さんたち。大変お世話になりました。
蛙の鳴き声を聞くと、同室のお姉さんを思い出す。私は数日で退院して今も元気である。お姉さんもそうであるといい。


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